『大奥』、やっと読めた~
映画にもなったよしながふみさんの『大奥』
ずっと気になっていましたが、ふと立ち寄ったビデオ屋さんに、貸しコミックで出てるのを見て、1巻から12巻を大人借り(?!)しちゃいました。
12巻を一週間で読むのはちょっとキツかったので、多少流し読みになってしまい残念。またいつかゆっくり読もう。
長~い徳川時代なので登場人物が多くなるからかもしれないけど、顔がよく似てる人が多くてちょっと紛らわしかったかな。
子どもから青年くらいまでの男性のみがかかるという赤面疱瘡という病気が流行し、男子人口が減り、そのせいで家督を女性が継ぐこととなった徳川時代、女性が集められたはずの大奥も、男性が将軍(女性)に侍るところとなり・・・という男女が逆転していたという奇想天外な歴史コミック。映画やドラマになって話題を集めていたので、内容を少しはご存じの方も多いのではないかと思います。
大奥って、中で働いている人がすべて将軍様のお手付きとなるわけではないけれど、大前提が次代の後継者を産みだすためにあるところ。
だって、将軍の日常の生活は、中奥(平常の将軍の居場所)にてお側用人らがお世話をするので、まったく大奥に立ち入らなくても生活はできるのです。
逆に、代々の将軍らの命日など忌日には、夜大奥へ立ち入らないことも。(毎朝、大奥内にある仏間に礼拝はする。)
単に将軍のプライベートな生活ゾーンというより、より以上に生殖活動にウエイトを置いているところ。
男性は将軍しか立ち入れない。(一部のエリアには男性職員もいる)
男性であっても女性であっても将軍さまって本当に大変だなぁと思う。
次代の後継者生産という大命題のためには、個人の気持ちや存在はかき消され、好きとか嫌いとかなんて全く関係なく物事は進み、将軍家の正当な血筋の後継者を確保するため、
様々なルールや不文律が決められて、葛藤、矛盾、理不尽、いろんなことが生じてきます。
大奥って、将軍も、その配偶者たちも、どっちも大変。
彼らの産む、産まない、が日本の国の政治を左右するんですから。
ただ、側室というのは、家系が絶えることのないよう、複数人の後継者を用意するために存在すると思うのですが、女性が家系を継ぐと、その人が子どもを産まないことには後継者ができないわけで。(後継者を産めるのはたった一人)
男性が女性を大奥で囲っているなら、それこそ毎夜違う女性に通えば、計算上一年で365人の女性を妊娠させて、後継者を儲けられるでしょうが、女性が大勢の男性を大奥で囲っても、産むことができるのはその女将軍ただ一人ですから、後継者は一年に一人か二人しか儲けられません。
よって、大奥にそんなにたくさん男性を置いておく必要はないと思うんですけどね。(コミックには、その点に対する男性大奥の存在理由・意義も説明されています。)
とにかく、後継者を途切れさせず、少しでも多く生産しようとするなら、側室制度は必要だと思います。(当人たちの感情は別にしてね)
まして男系のみで継承しようとするなら尚更。
そういう意味ではいまの天皇家は大変だろうなと思う。
いまさら側室制度が復活するとは思えないけど、血脈の保持だけを考えたら、そうでもしないと難しそう。
大奥といえば、私にとっての原点は吉屋信子さんの『徳川の夫人たち』。
永光院・お万の方がどれだけ素敵だったか。
よしながさんの永光院(有功)の描き方は、私の中に刷り込まれてた吉屋版お万の方と比べ違和感なかった。
巻末の参考文献を見たら、筆頭に吉屋信子さんの『徳川の夫人たち』がある。
どおりでね~。
男性と女性の違いはあれど、美しさ、高潔さ、雅びさ、見識、すべて吉屋・お万の方に通じる。
吉屋さんは『徳川の夫人たち』で徳川15代の御台所や周辺について書きだしたところ、お万の方(三代将軍家光の側室)にほれ込んでしまい、頁の大半をお万の方に費やしてしまって15代まで行かなくなり、続編まで書くことになったと言われている。
それぐらいお万の方は魅力的に描かれている。
有功(ありこと)の流水紋の裃を見て、お万の方の、初お目見えの時の、青海波を銀の地摺りにしたお掻取りが浮かんできた。
ああ、また読みたくなったなぁ。『徳川の夫人たち』
お万の方は永遠の私の憧れだけど、こんな女性になりたいと思ったのではなく、憧れたのは、その人間性だったんだなって、男性版お万の方の有功を見ることによって、改めて思いました。
それにしても、コミックの巻末で参考文献が出てるのなんて、今まで見たことあったかな。
よしながさん、すごく勉強されたんでしょうね。
これらも全部読んでみたい。考えるだけでワクワクします。